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金崎内科医院

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院内報2021年1月1日号を掲載しました

寒さと乾燥のいつも通りの冬の気候が続きます。でもいつも通りの生活に戻るかは先が見えそうで見えません。むしろこれから最大の試練なのでしょうか。今回ばかりは楽観的なことが言えなくなってしまいました。悲観論の方が現実的となってしまい、個人的にもなんだか敗北感すら感じてしまいます。

<かぜ情報>

新型コロナウイルス感染が広がっていると伝えられていますが、発熱や咳などの症状で受診される方は12月は少なくなっていました。年が明けての状況がどのように展開していくのかはわかりませんが、都内では発熱などの相談件数が年末から増えているとのことです。その状況がこの地域まで波及するのか、こちらも予断を許さない状況です。

<新型コロナウイルスについて>

前回の補足です。新型コロナウイルスは比較的変異しにくいと書きましたが、海外では変異ウイルスの拡大が懸念さされています。変異しにくいとは行っても実は絶えず変異はしています。活発に変異をしているウイルスで有名なのがインフルエンザウイルスでしょう。コロナウイルスはRNAウイルスの中でもゲノム配列が長いため変異する機会がその分増えてしまうのですが、一方でそのためか、変異を自己修復する能力ももっています。これは他のウイルスには見られない特徴のようです。従って絶えず変異はしてもその毒性やワクチンが認識する抗原性の変化には至ることは少ないと考えられています。この辺がスペイン風邪のときにインフルエンザウイルスが変異して強毒性になったと同じようなことがコロナウイルスで想定しにくい理由になっています。現在問題になっているのは「感染のしやすさ」です。動物実験ではそのようデータはあるようで、現在の感染の拡大とも関連は想定されていますがわからないことが多く、念のため変異に注意しましょう、ということです(そもそもコロナウイルスこれまであまり研究されてこなかったそうです)。また、これも補足ですが、現在の「新型コロナウイルス」は従来の人の風邪コロナウイルスが大きく変異したものではありません。どこから来たかというと、動物です。コウモリがもともと持っている(「宿主」といいます)が直接、あるいは他の動物を媒介にして人に感染するように変異してしまったと考えられています(これは大きな変異と言えます)。今回の新型コロナウイルスの場合、媒介動物をセンザンコウとするの見方があります。この動物由来のコロナウイルスに人は思いのほか免疫がなかったということなのでしょう。少しずつ感染力を変化させているのも相まってパンデミックになってしまいました。そもそもこれまで「人かぜコロナウイルス」として存在している4種類のうち少なくとも2種類はコウモリ由来とされています。ということはこれまでも新型コロナウイルスとして動物から入ってきてパンデミックを起こした歴史はあったかもしれません。今の新型コロナウイルスもいずれはそうなるかもしれませんがそれがいつになるのかはわかりません。 

<糖尿病コーナー>

現在、糖尿病のお薬は何種類あるでしょうか。内服薬では7種類あります。挙げてみます。SU、ビグアナイド、グリニド系、ピオグリタゾン、DPP4阻害薬、αGI、SGLT2阻害薬、です。皆さまは商品名しかわからないかもしれませんがこのどれかに分類されます。注射剤ではインスリンと「GLP1-アナログ」の2種類です。同じ種類でもメーカーごとにさらにいくつか種類があり、合剤もありますのでそれこそ星の数ほど、といったら大げさでしょうか。それほど糖尿病はまだ完全にコントロールが難しいという特徴を反映しているともいえます。また、治療を受けている患者さんの数も多く、他の疾患とも関連が多いので製薬メーカーも開発にしのぎを削っているわけです。そして、今年さらに2種類の内服薬の発売が予定されています。これは患者さんにとってはもちろん期待していいことだと思います。最近は薬のデータについての情報提供には規制が厳しいのでここでは詳細は省きますが、1つめは「ミトコンドリア」の機能に関係する薬、もう一つは先ほど挙げた注射剤GLP1アナログの内服タイプです。以前から私なりにアンテナをはって新薬の候補をチェックしていたのですが、このミトコンドリア機能に関係する薬は昨年まで知りませんでした。もちろんいろいろ情報を確認してから処方についてご相談することになると思いますが、新薬は日本では2週間分しか処方できないので実際に広く使われるようにあるには2年くらいかかるかもしれません。

<院長の日記>

昨年、人類は一部の国を除いてコロナウイルスにやられっぱなしの状態でした。マスクをつけ、密集を避けるなどしか手段がなく、とにかく避難というか、逃げるしかない、といった感じでしょうか。しかし、あるウイルス学者が言っていましたが、コロナウイルスには人と戦おう、などという意志はあるはずもなく、あくまでもコロナウイルス独自の都合で起きている自然現象にすぎないということです。そもそも、人類は、とりわけ西洋の近代文明から発展した思想では自然を支配しよう、支配できるという考えが当たり前に思うようになってきています。確かに科学の発達はすごいです。飛行機で空を飛べるし、外国とも簡単に連絡を取り合えます。高層ビルは建ちますし、宇宙にも行こうしています。昨年は人工衛星を使って小惑星から砂をとってきてしまいました。専門家でなければどうやったらそんなことが出来るのか想像もつきません。また哲学的な話になりますが人は自分の都合からしか物事を捉えることができません。「客観的」に考える視点があると言っても、しかしどこまで行っても人は自分の認識の外には立てないのです。哲学的には「経験論」「認識論」「現象学」といった領域が確立され議論されてきました。科学は哲学からは独立した絶対的なものとみなされやすいのですが、どこまで絶対的なものかは本当は疑問です。数学や物理の法則は絶対的とは言っても、自然界にはそもそも本当にそのようなものがあるのかということとは違うかもしれません。数学も物理も人が自然界を理解するために作った人工物にとどまる、すなわち人間に認識の範囲内のものであるということです。とはいえ、科学の恩恵は大変大きく、医学も科学的アプローチによってこれまでも人類に大きな恩恵をもたらしてきました。もちろん感染症に対してもです。そこにおいて強力な武器となってきたのがワクチンです。小さなお子様をもつお母さまは実感されるかもしれませんが、子どもは実に多くのワクチンをうちます(うたれます)。ポリオ、破傷風、ジフテリア、百日咳、肺炎球菌、インフルエンザ菌、ロタ、麻疹、風疹、BCG、水痘、日本脳炎。これらすべてが定期接種として我が国の子供のほぼ全員が受けています。他にも任意でインフルエンザウイルス、風疹、おたふく、ヒトパピローマウイルス(子宮頸がん)なども受けられます。これらはウイルスや細菌に対して「盾」となるもので、目には見えませんが人の体を守ってくれているのです。
今年はコロナウイルスに対しで人類が本格的に「反撃」に転じることになるのでしょうか。その最大の武器として期待されるワクチンがどの程度私達に恩恵をもたらすかはまだわかりません。欧米で認可をうけた2種類の新型コロナウイルスワクチンはこれまでになかった全く新しいタイプのワクチンです。欧米で本格的な接種が始まったばかりですが、これまで少なくとも短期的には想定外の副作用はでていません。これほど短期間にできたのには新型コロナウイルスが流行する前からこの新しいワクチンの研究はされてきたという背景があります。また、20年前のSARSコロナウイルス流行も研究の端緒になっていたようです。詳細は省きますが効果を発揮するしくみにおいて理論的には画期的なワクチンであり、もし新型コロナウイルスで成功してしまったら、他のウイルスに対してもすぐに作ることができるためすぐに応用でき、もはや怖いものなしの境地にすら達するかもしれません(そんなに甘くはないとも思いますが)。現在の新型コロナウイルスの長期的な感染拡大、今後も別のコロナウイルスが定期的に人間の襲いかかってくることを想定すれば人類が克服してききた他の感染症と同様に、ワクチンという盾に頼らざるを得なくなるでしょう。ノーガードで撃たれまくって一定程度の犠牲者が出てしまうような状態ではいられないはずです。あるいは相手が勝手にいなくなってくれればいいのですが、希望的観測は危険です。コロナウイルス自体に意志はないといいましたがこちらはどうしても「戦い」たくなってしまいます。ここまでやられたのだからやっつけなければ気が済まないというのは人の自然な感情でしょう。