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金崎内科医院

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院内報2020年2月1日号を掲載しました

寒がりの私ですら今年の冬は暖かいと感じます。個人的にはありがたいことです。カイロを使う頻度も減りましたし、気分も軽いです。でも、何かおかしい、違和感を覚えます。このまま2月も過ぎるのでしょうか。たとえもし寒くなったとしても短い冬と感じることに変りはなさそうですね。

<かぜ情報>

年明けからインフルエンザの流行は落ち着いています。12月に近隣の小中学校でやや大きな流行がみられたのですが、年明けていったんは落ち着くことは予想されたのですがその後に予想された大きな流行がまだみられません。このまま終わるとは思えず、警戒はしておいたほうがいいでしょう。今年はインフルエンザとともに冬の2大感染症ともいえるノロウイルスなどによるウイルス性胃腸も低調です。

<診療時間の変更予定のお知らせ>

今年(令和2年)4月より、水曜日と土曜日のいずれも午後の診療は中止とさせていただきます。ただし、土曜日の午前からの診療は13:00まで延長いたします。どうかご周知くださいませ。

<糖尿病コーナー>

今回は久しぶりにお薬の解説をしてみます。今回取り上げるのは「メトホルミン」(メトグルコも同じ)です。糖尿病領域では近年次々に新薬が登場していますがこのメトホルミンは昔からあるお薬で今でも治療の基本となるようなお薬です。今年で発売されて60年だそうです。60年も基本薬であり続けるにはそれなりに理由があります。まず一つの理由は高い信頼度です。新薬が作用的でいい薬であっても長く使っても大丈夫なのか?という懸念は時間が経たないと証明はできません。その点、メトホルミンは60年経っても新たな問題は出てきていません。むしろ別の二次的作用が期待されています。確証にまではいたっていませんが癌の予防の作用など挙げられています。2つめの理由は血糖を下げる作用があり、かつその作用が薬の量にほぼ比例するということです(容量依存性といいます)。3つ目は費用が抑えられることです。お薬代は決してバカにはできません。4つ目は体重を増やさないことと単独では低血糖のリスクが低いということです。いいことばかり挙げましたが、デメリットもあえて挙げてみます。一つ目は1日うち2回か3回に分けて飲まなければいけません。多くの薬は朝1回で済むようになってきましたので、ちょっと内服が面倒に感じる人もいるかもしれません。実際に処方している患者様からたまに飲み忘れた分が余っているので今回は処方しなくてもいいです、と言われます。2つめのデメリットとして錠剤がやや大きいです。250㎎錠と500㎎錠の2つの規格がありますが特に500mg錠は他の薬に比べてかなり大きいです。容量が増えると作用も期待できますがその分錠数も増えていきます。3つ目のデメリット、というか注意すべき副作用に「乳酸アシドーシス」があります。これは血液中の乳酸が増えて酸性になってしまう危険な病態です。しかし、どういう時にこの副作用が起きやすいかはわかっています。代表的なの脱水のときと腎機能が低下しているときです。逆に言えばこの状態のときはお薬を減らすか中止すれば回避できます(最近では脱水や腎機能低下単独でも乳酸アシドーシスは起きるのでメトホルミンは関連はないのではないか?という報告もでています)。この乳酸アシドーシスの危険性が大きな話題となり、全世界で一時期メトホルミンがほとんど使われなくなったことがありました。今から20年ほど前です。私が医師になったばかりの頃です。しかし、実際には乳酸アシドーシスは稀であり、注意して使えばまず大丈夫、それどころかやはり作用の期待できる有用な薬だと見直され再び使われるようになったのです。一度廃れかけたところから復活したということから、厳しい評価を潜り抜けてきた歴戦の勇士といったら大げさでしょうか。ところで、どうしてメトホルミンが血糖を下げてくれるのか、ということについては現在でも解明されていません。代表的な作用は、肝臓の細胞のミトコンドリアのエネルギー産生を一部ブロックすることにより糖新生を抑えるということです。このように言われてもよくわからないですよね。私なりに文学的に解釈すると、細胞にやや負荷をかけて、糖分を作らせる余裕を与えない、つまり人間が運動で自分の体を鍛えて強くするようなイメージでしょうか(このような言い方をする人はいないと思いますが)。欧米でのガイドラインではまず、誰にでも最初にこのくすりを使いなさい、といったように記述されています。古いうえに費用が抑えられる製薬メーカーがお金を出して行う大規模臨床試験が行われず、また製薬メーカーが主催、共催する研究会や学会でも取り上げられることは少ないのですが、宣伝が少ない、または新しいデータが少ない、イコール薬としても価値も低い、ということではないということも私達(医療者側)は肝に銘じておかなければいけません。

<院長の日記>

子供の頃からプラモデルを作るのが趣味でした。小学校高学年からはガンダムのプラモデル(「ガンプラ」)が中心になりましたが、それ以前は戦艦とお城のプラモデルをたくさん作りました。戦艦などは30隻くらいあったかもしれません。その中でよく覚えているのが航空母艦「信濃」です。とにかくかっこよくて強そうな空母なのですが、小学校3,4年生のくらいの誕生日のときに、当時発売されている部類では最大サイズでほぼ大人向けの信濃のプラモデルを父が買ってくれました。あの時は本当にうれしかったです。それから時間は経過して、大学受験のために浪人しているときにまた別の(ウオ―ターラインシリーズの)信濃のプラモデルを作りました。さすがに高校を卒業するくらいの年なので艦載機の色も丁寧に塗るくらい没頭し我ながらなかなかの出来映えに悦になっていました。しかし、実は母がそれを見て何だが暗い気持ちになってしまったと後で聞かされました。先の見えない浪人生としては親を心配させるようなことはしてはいけないな、と私も心が痛みました。さて信濃という航空母艦をご存じでしょうか。最近NHKで放送されたのを見て悲運の空母であることを知りました。その前に、日本海軍で最も有名な戦艦は大和です。当時世界最大、無敵、不沈と言われていましたが、アメリカの航空機の集中攻撃うけてあまり活躍できずに沈没しました。当時は戦艦同士の戦闘は時代遅れ、海軍の主力は航空機になっていたのに時代に逆行したものを作ってしまったその象徴のような存在になってしまいました。くしくも航空機による奇襲作戦などにより航空機の威力を日本軍が証明したのにもかかわらずです。大和と同型艦がもう一艦ありました。「武蔵」です。これも連合艦隊の旗艦として活躍が期待されましたが、やはり航空機の攻撃であえなく沈没しています。そして、この大和、武蔵と同型の3番目の艦が信濃なのです。巨艦至上主義の思想があったとしてもやはり空母も必要です。特に戦時中には多くの空母が失われため信濃は建造途中で急遽、空母に変更されたのです。ベースが大和と同じですから、やはりとにかく大きく、当時世界最大の空母だったようです。外観も大和の美しい形を船体に残していますのでやはりかっこよく、プラモデルを作っていてもその洗練された形状には惚れ惚れしたものです。空母は戦闘機を運ぶのが主要な任務であり、空母自体は攻撃力も防御力もどうしても戦艦より劣りますが、信濃は厚い装甲の飛行甲板と多数の機銃を備えていました。ところが信濃も大和、武蔵同様にほとんど活躍できずに沈んでしまいました。なんとたった1隻の潜水艦による4発の魚雷によってです。原因はまさに敗戦間近の当時の日本の「貧すれば鈍する」を象徴することが重なったことが指摘されています。進水式を挙げた後にも関わらず未完成ともいえる状態だったこと、訓練も試験もできず、乗員も経験不足の士官ばかりであったことなどが挙げられます(海軍なのに泳いだことがない人がたくさんいようです)。しかも戦闘に参加するためではなく初めて外洋に出ての移動中にやられてしまいました。当時の海軍関係者はさぞ落胆したことでしょう。「情けなくて仕方がなかった」と同時の乗員が振り返っていました。この沈没のときに乗員の半数に匹敵する900人程が亡くなっています。もちろん、建造には多くの労力と資材が投入されたはずです。信濃のプラモデルには多数の艦載機が付属しますが、実際の信濃はほとんど載せたことがなかったそうです。もはや幻、空想のかなたにしか存在しない、そんな悲しい空母でした。