2025/12/08
今年は夏が長く感じたせいか、あるいは年をとったせいなのか、あっという間に12月になってしまいました。
これから本当に寒くなるのでしょうか。多分、なるのでしょう。いや、絶対ですね。やはり寒いのは嫌です。
でも寒いとコーヒーが美味しくなったり、お風呂が気持ちよくなったりするので悪いことばかりではないですね。
<かぜ情報>
11月はインフルエンザが大流行となっています。コロナとの違いとして感じるのは、インフルエンザは小児から始まるということです。幼稚園や学校から始まり、同居する親にうつってそこから大人に広がるというパターンです。コロナよりも子供の間で広がりやすいようであっという間に学級閉鎖となります。12月でなんとか落ち着いて欲しいものです。
やはり咳が長引くことで受診される方が多い状況も続いています。発熱がないわりに激しい咳が続くケースでは検査してみると百日咳であったというケースもまだみられます。かぜにアレルギー症状が重なることで咳が長引くケースもあります。
<年末年始の休診のお知らせ>
12月28日(日)から1月4日(日)まで休診とさせていただきます。
今年は28日と4日が日曜日になるので長いお休みをいただきます。
<糖尿病コーナー>
「ステロイド」と呼ばれるものが治療薬として広く使われていることをご存知の方も多いと思います。
ステロイドに属する化学物資は多様に存在しますが、そのうち「副腎皮質ステロイド」と呼ばれるものがありさらにその中に分類される「グルココルチコイド」というものが主にお薬として使われます。ここでは「ステロイド(製)剤」と呼ぶことにします。
ステロイド製剤を使う目的は免疫反応の強力な抑制です。過剰な免疫反応によって起きる病気は沢山あります。
膠原病やリウマチなどが代表的ですが、一部の肝炎や腎炎、肺炎などもあります。免疫作用というのは私達の体によっては大切なもので外から侵入してくる病原体を攻撃して体を守る働きがあるのですが、何らかのきっかけで自分の体を攻撃してしまうのが上に挙げたような自己免疫疾患です。
ステロイド剤はこれらに対してとてもよく効くのですが、ステロイドには免疫反応を抑える以外にも様々な働きがあるため、ステロイド剤を多く、長く使うと様々な副作用がでてきます。
いわば「両刃の剣」です(抗がん剤の副作用を軽減するなどの効果もあるためがん治療でも使われることがあります)。
免疫反応を抑えること自体も場合のよっては感染しやすくなるなどのマイナスの影響があります。
ステロイド剤には、内服薬、注射薬、塗り薬、吸入薬などがあります。塗り薬はアトピー性皮膚炎など多くの皮膚疾患に使われますし、吸入薬は喘息などに使われます。
副作用が現れやすいのは全身投与となる注射薬と内服薬です。
そしてステロイド剤の代表的な副作用がの一つが血糖値を上げてしまうことです。ステロイド剤によって血糖値が上がりすぎてしまい、糖尿病になった場合を「ステロイド糖尿病」といいます。ステロイド糖尿病は全ての人がなり得る訳ではなくステロイド使用者の8~18%程度とされています。
ステロイドで血糖が上がってしまって問題になるのはもともと糖尿病がある人がステロイド剤を使った場合です。この場合はステロイド糖尿病とは言いません。「ステロイドで糖尿病が悪化した」というのが正確なところです。
当院に通院されている糖尿病をもつ人でも治療のために止むを得ずステロイド剤を使うことになり血糖がさらに上がってしまい、ステロイド剤を処方した他の医療機関から当院にご相談をいただくことがあります。
ステロイド剤で血糖が上がってしまった場合には基本的にはインスリン製剤を使うことが推奨はされています。
しかしステロイド剤の使用量や使用期間によっては内服薬や場合によっては薬を使わずに対処できる場合もあります。
一過性に血糖が高くなってもステロイドを減らす、あるいは止めることで多くの場合はもとに戻るのでその期間をどのようにしのぐかが判断のしどころです。
さて、副腎皮質ステロイドは私達自身も一定量自分の体のなかで合成され血液中に分泌されています。
その名の通りその役割を担っているのが副腎皮質というところで腎臓の上の乗っているとても小さな臓器です。
副腎皮質ステロイドを自分で多く分泌してしまうことは病気ではなくてもあります。体になんらかの負荷がかかった時です。
精神的・肉体的ストレス(痛みや病気全般)がかかっている時です。
副腎皮質ステロイドは体に負荷(ストレス)がかかった時に体の元気さを何とか維持しようとして分泌されるのです。
そのため「ストレスホルモン」と呼ばれることもあります。
この働きは短期的には有効なのですが、体を休ませるよりも体に鞭打つ方に向かわせるので長期的にはいろいろ問題が起きます。
もちろん、血糖値を上げる方向になります。つまりストレスがかかっていると副腎皮質ステロイドのせいで血糖値が上がってしまうのです。
糖尿病を悪化させる要因として運動不足や過剰あるいはバランスの悪い食事が挙げられますが、ストレスの影響も大きいのです。
同じものを食べて同じくらい運動しても生活リズム(時間)が不規則なだけでも血糖が上がりやすくなります。
この場合も体にとっては不自然なために自分では意識していなくてもストレスとり副腎皮質ステロイドが影響してくるのです。
ストレスホルモンである副腎皮質ステロイドの存在を知っておくだけでも日常の血糖の管理に対する意識が変わってくるかもしれません。
<院長の日記>
今年は、東北地方や北海道での熊による被害が異常なほど多く発生しています。
人的被害は少ないものの、関東でも熊の出没情報が増えており、気候変動や人間による土地開発、これまでの保護政策などが背景にあるようです。
冬眠によって一時的に落ち着く可能性はありますが、これが毎年続くようであれば深刻な問題です。
個人的にも熊による事件には以前から関心があり、この紙面でも大正時代の三毛別羆事件(さんけべつひぐまじけん)や、2年前に北海道で起きたOSO-18による牛の連続被害事件を取り上げました。
その際は特に「北海道のヒグマの恐ろしさは、本州のツキノワグマとは比べものにならない」という内容でした。
しかし今年は、本州でもツキノワグマによる死者が複数出てしまいました。
熊の怖さは、何よりその体の大きさにあります。ツキノワグマは体長1mほどで、人間の大人より小さく感じるかもしれませんが、それでも野生動物としては十分大きく、鋭い爪と牙による殺傷能力は高いとされています。
牛や馬よりは小さく、基本的には肉食ではありませんが、最近の事例を見ると人の方へ襲いかかってくるケースが増えており、「飼いならす」「おとなしくさせる」といったことは不可能だと感じます。
もはや逃げるか、戦うかしかありません。もちろん、素手で戦うなど極めて危険です。
とはいえ、人間はこれまで熊の恐ろしさだけを見てきたわけではありません。実物を近くで見れば怖いですが、写真や絵では決して恐ろしい動物には見えず、むしろ愛らしさすら感じさせます。
プーさんも熊ですし、「くまモン」も人気キャラクターです。パンダも熊の仲間で、「森のくまさん」という童謡もあります。
しかし、自然の中での熊はやはり出会ってはいけない存在であることを、今年あらためて思い知らされました。
日本に住んでいて動物による直接的な危険を心配することになるとは、多くの人が想像していなかったでしょう。
ライオンやトラはアフリカ、サメは海の中、大蛇は南米あたり——そのように考えていたのではないでしょうか。
それでも日本には「マタギ」という唯一の動物ハンターが存在してきました。これはつまり、かつてから熊の脅威と向き合ってきたという証でもあります。
自然は恩恵を与えてくれる一方で、日本ではもともと地震や水害などの自然災害が多く、「自然は時に襲いかかってくるもの」であることも私たちは知っているはずです。
今年は、そのことをあらためて警告されているように感じます。

