2025/06/04
5月ともなるともう暑い夏への心の準備が必要かもしれないと思っていましたが今年はそれほど暑い日は多くなかったように感じます。むしろ5月後半は寒いと感じる日が多かったです。これからは晴れの日が少ない時期になります。天気が悪い日は朝から気分が憂鬱となりがちなのを年齢を重ねると特に感じるようになりました。猛暑の夏とどちらが言いのかわかりませんがいずれにせよこれからしばらく厳しい季節のなる覚悟はしておくことにします。
<かぜ情報>
風邪症状で受診される方は3月以降は特に増えてはいません。新型コロナやインフルエンザで陽性となる方は時々いらっしゃいます。中国や東南アジアで新型コロナがかなり増えているようです。今年の夏も日本ではまた感染の波が来るのかもしれません。なぜか毎年夏にピークが来ています。覚悟はしておいたがいいかもしれませんが特に警戒しても防ぎようもないのでなにか自粛するようなことは不要だと思います。
<伊奈町特定検診の開始について>
6月18日から毎年恒例の伊奈町の特定検診が始まります。伊奈町在住の国民健康保険証か後期高齢者証をお持ちの方が対象です(オプション検査となっている胸部レントゲンや大腸がん検診:便潜血などは社会保険に加入の方でも受けられます)。対象者には伊奈町から案内(受診券)が届きます。当院でも接種券が届いた方から予約を受け付けます。今年は期間がやや短くなり10月末までとなります。毎年9月以降は予約がとりにくくなる可能性もありますので早めの受診をおすすめします。ちなみに町の6月号の広報で検診受診促進の特集でインタビューに答えるという形で取り組みに協力させていただきました。
<糖尿病コーナー>
当院では糖尿病で受診していただく時にはHbA1cや血糖などの血液検査とともに毎回検尿もさせていただいております。検尿では主に3つの項目について検査をしています。糖とケトン体とタンパクです。試験紙を用いた方法で、その場ですぐに結果が出る簡易的なものです。
まず、尿糖は血糖よりは重要性が低いですが参考になります。例えばその場での血糖値が高くなくても尿糖が多い場合にはその少し前の時間で血糖が高かったことが伺えます。尿糖は血糖が高いときに糖が尿に漏れ出してきたものですが、血糖の変動と時間差があります。また、最近広く使われるようになった糖尿病の内服薬であるSGLT2阻害薬(商品名:ジャディアンス、スーグラ、フォシーガ、カナグルなど)を内服されている場合にはくすりの作用するしくみのため尿糖が陽性になりますが、このことについては問題ありません。
尿ケトンは体の脂肪細胞の分解が急に進んでいる場合に陽性になることがあります。著しい高血糖のときに同時に尿ケトンが陽性の場合には注意が必要です。自分でインスリンを分泌して血糖を下げる能力が極端に落ちているときの尿ケトン陽性はインスリン注射や内服薬で速やかに血糖を下げなくてはいけない緊急事態のサインです。血糖がそれほど高くない場合の尿ケトンはやや厳しめの食事療法などでダイエット効果により脂肪の分解が進んでいることを示すものです。特に心配はありませんが、前述のようにインスリン注射で治療中の人でさらにSGLT2阻害薬を使っている場合には例え血糖値が高くなくても尿ケトンが出たときには注意が必要です。このような場合は極めて稀ながら「正常血糖ケトアシドーシス」の可能性があります。もともと自分でインスリンを分泌して血糖を下げる力が弱い場合(だからインスリン注射を使うわけですが)、SGLT2阻害薬で血糖が下がるなどして細胞内に血糖が行きわたらない場合に急速に脂肪細胞を分解し、血液中のケトンが増えすぎると細胞が酸性になってしまう(アシドーシスといいます)ことがあります。これは緊急的な治療を要する事態です。このような場合には自覚症状としてつよいだるさや吐き気などの症状が伴うときがあります。ちょっと説明がむずかしかったかもしれません。尿ケトンについての判断は専門的な解釈が必要なので、そんなものがある、程度の理解で結構だと思います。
3番目の尿タンパクはとても重要です(一番重要かもしれません)。紙面の都合により改めて次号で説明させていただきます。
<院長の日記>
近隣の中学校の校医を20年程させていただいております。少子化の時代にあって珍しく伊奈町の北部地域は子供の数が最近まで増加していました。小学校が新たに作られて既に10年は経ったでしょうか。現在は子供の数は減少に転じており小学校の学級数も減っていますが中学校は最近まで最大の人数でした。中学校は小学校のように新たに作られずに校舎の増築での対応となったため結果的にマンモス校となり近隣市町村でも最大の規模となりました。私も昨年までは春の全校内科検診は6日に分けて診療の合間の昼の時間に行っていました。中学生は体も大きく、声も大きいです。昼の時間に行くと生徒さんが廊下にもいっぱいいて、その中をかき分けてようやく保健室に到達する、といった具合でした。子供は地域の宝ですが、ありがたい思う反面検診は大変でした。近隣の他のクリニックや病院の先生からも大変だね、と同情もされました。これだけの人数だと他のクリニックの医師の応援も頼めるとされていますが、結局私一人で続けてきました。私自身、団塊ジュニア世代で浦和の公立中学に通っていましたがそのときはもっと生徒数が多く一学年なんと12クラスでした。ですからマンモス校には違和感はまったくありませんでした。ところで最近、検診をしていて思うのですが最近の中学生はとても「おりこうさん」になったように感じます。10年程前は検診の順番を待っている生徒さんはふざけ合ったりおしゃべりをしたりしていていつも先生たちに叱られていました。先生たちも私に気をつかってくれて「聴診の音が聴こえづらいから静かにしなさい!」と一生懸命注意していました。先生たちも大変だったと思います。ところが最近、特に今年ですが、順番を待っている生徒さんたちはとても静かにしてくれています。衝立の向こうで列を作って並んでいるはずなのですが気配すら感じないときもあります。そういえば私が中学生の頃はかなりひどかったと思います。ちょうど金八先生の時代です。校内暴力が社会問題となり、ツッパリとかスケバンなどと言われ外見からそれとわかる恰好をしていました。髪はリーゼントで剃りを入れ、太いズボンを履き、学ランのボタンは締めず下には派手なシャツを着て、いつも目つきで相手を威嚇している、そんな感じでした。今は一目で「不良」とわかる生徒さんはいません。みなさんお行儀よく制服を着ています。今の時代、そんな恰好をしてダサイとしか見られないとは思いますが・・・。加えて行動もお行儀よくなって、めでたしめでたしと言いいたいところですが、実際はやはり多感な時期です。特にメンタルの問題を抱える生徒さんが多いように聞いています。当院にも心身の不調で受診される中学生が最近多くなっているように感じます。友人関係や部活、勉強、中には家庭の問題で悩みが多くなっているようです。そもそも中学生は子どもから大人になっていく変化の時期ですから不安を感じることが多くなるのはむしろ当たり前の時期と言っていいでしょう。誰しも程度の差こそあってもそうだったと思います。昔の「ツッパリ」のように外面化はしなくなってむしろ大人からは見えにくくなっているのかもしれません。最近はSNSなど対面なしのコミュニケーションツールが発達していることもより状況を複雑化させてしまっているのでしょうか。校医としてできることは少ないのですが、「おりこうさん」になってきた中学生の今後がかえって心配です。先生たちも大変だと思いますが私なりにどのようなサポートができるか考えてしまいます。